チェンバロの音4 of otegami-studio



HOME > チェンバロの音4








































Ⅳ チェンバロの音は

ふと気がつくと
「本日のコンサートも次で最後の曲です」と紹介が入った。
これが本当のチェンバロの音だったのだ。
20年かかって、ようやく聴いたチェンバロの音。


もうすぐ終わってしまう頃になって
どんな曲が演奏されていたのかが気になった。
もちろん「レディージェーン」は無いけれど。
題名や作曲者を見ようと
手元のパンフレットに目を落とす。


チェンバロについて書いてある。
まずこのチェンバロが作られた経緯。
それからチェンバロはどういう楽器かという説明が続く。

「チェンバロは16世紀から18世紀にかけてヨーロッパで栄えた鍵盤楽器である。
18世紀終わりに現在のピアノにつながるフォルテピアノが出現し、
チェンバロはだんだん使われなくなっていった。
同じ鍵盤楽器であるが、ピアノは弦をたたいて音を出すのに対し、
チェンバロは弦をはじいて音を出す。
弦をはじくのはジャックと呼ばれる木製の平たい棒についている爪、
プレクトルムである。
この爪が弦をはじく事によって生まれるのがチェンバロの音である」


弦をはじくのはジャック。
ジャックについている爪がはじいて
音を出す。

そうなんだ。
今日、よくわかった。

あの時、ジャックは新しい現実を生きていこうと決断した時だったのだ。
新しい自分を組み立てるのに、青春の夢の部品は役立たなかったのだ。
音楽と映画と本と「私」は
彼の青春の夢の部品だったのだ。


チェンバロの音は
決して大きくなはない音。
遠い昔のメロディーを内緒でささやくような音。
美しくてキラキラしていて
大事に両手で包みたくなるような音だった。



LinkIcon前のページに

LinkIcon「チェンバロの音は・・・」のはじめから